## パレートの社会学概論の分析
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パレートの社会学概論の概要
ヴィルフレド・パレート(1848-1923)は、イタリアの経済学者、社会学者であり、彼の社会学理論は、20世紀初頭に大きな影響を与えました。彼の主著『経済学提要』(1906年)と『一般社会学概論』(1916年)で展開された社会学理論は、人間の行動の非合理的側面を強調し、社会を理解するための新しい枠組みを提供しました。特に、『一般社会学概論』は、パレートの社会学思想の集大成と言える著作であり、社会の構造と変化を体系的に分析しています。
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論理的行為と非論理的行為
パレートは、人間の行為を「論理的行為」と「非論理的行為」の二つに分類しました。論理的行為とは、行為の目的と手段との間に客観的な論理的関係が存在する行為です。一方、非論理的行為とは、客観的な論理的関係が存在しない行為、つまり、感情、習慣、信仰などによって動機付けられた行為を指します。
パレートは、社会における人間の行為の大部分は非論理的行為であると主張しました。彼は、人間は自分の行為を合理的化しようと試みるものの、実際には、感情や信念といった非論理的な要因によって動かされていることが多いと指摘しました。
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残滓と派生
パレートは、非論理的行為の根底にある心理的要素を「残滓」と呼びました。残滓は、人間の生得的な本能や衝動であり、社会や文化によって変化することはありません。パレートは、残滓を六つのクラスに分類しました。
1. 結合性(combinations): 新しい組み合わせを生み出す傾向
2. 持続性(persistence of aggregates): 既存の状態を維持しようとする傾向
3. 外化(exteriorization of sentiments): 感情を外側に表現しようとする傾向
4. 社会性(sociability): 集団に属そうとする傾向
5. 個体性の完全性(integrity of the individual): 個人の独立性を維持しようとする傾向
6. 性的欲求(sex): 性的な欲求
一方、「派生」は、これらの残滓を正当化し、社会に受け入れられるようにするために用いられる論理的・道徳的な説明やイデオロギーを指します。パレートによれば、宗教、道徳、政治イデオロギーなどは、すべてこの派生の一種です。
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エリートの循環
パレートは、社会を「エリート」と「大衆」の二つの層に分けました。エリートとは、政治、経済、文化などの各分野において支配的な地位を占める少数集団を指します。パレートは、エリートは常に変化しており、「エリートの循環」と呼ばれる現象が起こると主張しました。
パレートによれば、新しいエリートは、大衆の中から現れ、既存のエリートに挑戦します。新しいエリートは、より優れた能力や資質を持っている場合もあれば、単に暴力や革命によって権力を掌握する場合もあります。そして、新しいエリートが権力を握ると、彼らは徐々に堕落し、再び大衆の中から現れた新しいエリートによって取って代わられます。
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社会の均衡と変化
パレートは、社会は常に変化しているものの、同時に一種の均衡状態を保っていると主張しました。社会の均衡は、様々な社会勢力の相互作用によって維持されます。しかし、この均衡は、技術革新、経済変動、戦争などの外部要因や、エリートの循環といった内部要因によって崩れることがあります。均衡が崩れると、社会は不安定な状態になり、新たな均衡状態を求めて変化します。