パムクの私の名は赤の案内
登場人物
* **黒**: 物語の語り手。故郷である12年間の流浪の旅から戻ったばかりの細密画家。叔父の工房で働き、美しいシェークレに恋をする。
* **シェークレ**: 黒の叔父の娘。12年前に結婚したが、夫は2年前に戦死した。
* **叔父**: オスマン帝国時代の細密画工房の長。スルタンからの極秘の依頼を受けている。
* **蝶**: 工房の細密画家の一人。傲慢で自信過剰な性格。
* **オリーブ**: 工房の細密画家の一人。穏やかで思慮深い性格。
* **ハサン**: 工房の見習い。物語の後半で重要な役割を果たす。
* **シェヴケト**: シェークレの息子。
* **エニシュテ**: シェークレの叔母。
あらすじ
16世紀末のオスマン帝国、イスタンブール。細密画家の黒は、12年間の流浪の旅を終え故郷に戻り、叔父の工房で働き始める。叔父はスルタンから、西洋の画法を取り入れた書物の制作を秘密裏に依頼されており、黒はそこで美しいシェークレと再会し、恋に落ちる。しかし、シェークレは黒の叔父の娘であり、未亡人ではあるものの、イスラムの慣習によって再婚は難しい状況にあった。
設定
物語の舞台は16世紀末のオスマン帝国、イスタンブール。スルタンムラト三世の治世下で、東西文化が交錯する活気あふれる時代であると同時に、伝統的な価値観と新しい思想との間で揺れ動く時代でもあった。
テーマ
* **愛と欲望**: 黒とシェークレの許されぬ恋を中心に、様々な形の愛と欲望が描かれる。
* **芸術論**: 西洋絵画とイスラムの伝統的な細密画の違いを通して、芸術の本質や創造の 의미について問いかける。
* **自己同一性**: 登場人物たちは、社会的な役割や宗教、芸術観の中で、自身のアイデンティティを模索する。
* **東洋と西洋**: 東西文化の衝突と融合を背景に、異なる価値観の対立と共存を描く。
語り口
* **多視点**: 黒を初めとする複数の登場人物が交代で語り手となり、それぞれの視点から物語が展開される。
* **メタフィクション**: 作中で描かれる物語と、それを語る行為自体が重ね合わされることで、虚構と現実の境界があいまいになるメタフィクションの手法が用いられる。
モチーフ
* **色**: タイトルにもなっている「赤」をはじめ、黒、白、金など、様々な色が象徴的な意味を持って登場する。
* **細密画**: イスラムの伝統的な細密画の技法や様式が、物語の重要な要素として描かれる。
* **盲目**: 視覚と盲目は、物語全体を通して重要なテーマとして繰り返し登場する。
* **馬**: 馬は、自由、力、そして死の象徴として描かれる。