パムクの私の名は赤の周辺
登場人物
* **黒
**物語の語り手。愛する女性シェクレーのために、12年間ペルシャから故郷に戻り、細密画工房で働く。
* **シェクレー**
黒の叔父の妻。黒のいとこである優雅な書家と結婚しているが、密かに黒を愛している。
* **優雅な書家**
シェクレーの夫であり、黒のいとこ。スルタンのために作られる書物に文章を書く才能ある書家。
* **エンリコ**
ヴェネツィアから来た細密画家。西洋の芸術観を持ち込み、物語に波乱を巻き起こす。
* **オスマン**
黒の叔父であり、細密画工房の親方。スルタンからの依頼で重要な書物を作らせている。
* **蝶**
黒の叔父の工房で働く若い細密画家。物語の後半で重要な役割を果たす。
* **オリーブ**
シェクレーの召使い。黒とシェクレーの間を取り持つ。
あらすじ
16世紀末のオスマン帝国、スルタン・ムラト三世の治世下。イスタンブールを舞台に、伝統的な細密画の世界に西洋絵画の影響が忍び寄り始めた時代を描く。
テーマ
* **愛と嫉妬**
黒、シェクレー、優雅な書家の三角関係を軸に、様々な形の愛と嫉妬が描かれる。
* **イスラム芸術と西洋芸術の対比**
細密画の伝統的な技法と西洋絵画の写実主義との対立を通して、東西の文化や芸術観の違いが浮き彫りになる。
* **自己同一性の模索**
登場人物たちは、変化の激しい時代の中で、自身の芸術家としてのアイデンティティや、愛と信仰における自分の立場を見つめ直す。
* **物語の構造**
複数の登場人物の一人称視点で語られる、多層的な物語構造が特徴的。死者の視点や擬人化された物の視点も登場する。
受賞歴
* 2000年:国際IMPACダブリン文学賞
その他
* 映画化:2006年にイランで映画化。監督はファルハッド・サファニア。