## パスカルのパンセと時間
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時間と人間の不安
パスカルは、「パンセ」の中で、人間の不安の根本原因の一つとして「時間」を挙げ、その考察を深めています。 無限と有限の狭間で揺れ動く人間の存在にとって、時間は常に不安の種となります。
「われわれは決して現在の中に生きてはいない。未来を予期し、過去を回想する。 つまり、われわれは存在しない時にあってわれわれ自身を運び去り、存在しないものを取り巻いて存在しないものの中で自分自身を見失うのである。」(断片47)
この有名な一節が示すように、人間は現在という一瞬を生きるのではなく、常に過去や未来へと意識をさまよわせています。 過ぎ去った過去への後悔、まだ見ぬ未来への不安、そうした時間的な広がりの中で、人間は本来存在するはずのない苦悩にさいなまれるのです。
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時間と気晴らし
時間によって生み出される不安や退屈から逃れるために、人間は様々な「気晴らし」に興じます。 パスカルは、狩猟、賭博、仕事といった活動を例に挙げ、これらが根本的な解決にならないことを指摘します。
「気晴らし。あらゆる人間の不幸は、ただ一つところにじっとしていられないことから生じる。」(断片139)
気晴らしは一時的に意識を他に逸らす効果はあっても、不安の根本原因を取り除くことはできません。 むしろ、気晴らしに耽溺することで、人間はより一層、時間と存在の空虚さに直面することになります。
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時間と永遠
有限な時間の中に生きる人間にとって、「永遠」は抗いがたい魅力を持つと同時に、大きな不安の源泉でもあります。 パスカルは、永遠の沈黙に対する人間の恐怖を「恐るべきもの」と表現しています。
「永遠の沈黙、この無限の空間が私を怖がらせる。」(断片206)
しかし、パスカルは「永遠」を単なる恐怖の対象としてではなく、人間の存在意義を考える上での重要な視点として捉えています。 有限な時間を超越し、永遠へと続く視点を獲得することによってのみ、人間は真の幸福と救済に到達できるとパスカルは考えていました。