パシュカーニスの法の一般理論とマルクス主義の選択
パシュカーニスの法理論
エヴゲーニー・パシュカーニスは、20世紀初頭に活躍したソビエト法学者であり、その著作「法の一般理論とマルクス主義」は、マルクス主義法理論の古典とみなされています。パシュカーニスは、この著作において、カール・マルクスの唯物史観に基づいた独自の法理論を展開しました。
法の「商品形式」
パシュカーニスの中心的な主張は、法は資本主義社会における商品生産と交換の関係を反映した「商品形式」を持っているということです。彼は、法的主体を「法的形式」で抽象化された人格として捉え、その関係性を商品交換における等価交換の関係に類似していると分析しました。つまり、法は、一見、自由で平等な個人間の関係を規定しているように見えますが、実際には、資本主義社会における生産関係や階級関係を覆い隠し、正当化するために機能しているというのです。
国家と法の「凋落」
パシュカーニスはまた、共産主義社会における国家と法の「凋落」についても論じています。彼は、階級対立が解消された共産主義社会では、国家や法といった強制的な手段は不要となり、人々は自由で平等な関係を築くことができると考えました。
パシュカーニス理論への批判
パシュカーニスの法理論は、その革新性と洞察力の深さから高く評価される一方で、いくつかの批判も指摘されています。例えば、法の「商品形式」という概念は、抽象的で分かりにくいという指摘や、現実の法現象を十分に説明できていないという指摘があります。また、国家と法の「凋落」という考え方も、現実の社会主義国家における国家権力の肥大化を考えると、楽観的すぎるという批判があります。