パシュカーニスの法の一般理論とマルクス主義のメカニズム
パシュカーニスの法理論における商品形態論
パシュカーニスは、カール・レンナーやその他のオーストリアマルクス主義者とは異なり、法と国家を経済の「上部構造」としてではなく、資本主義的生産様式に内在する「形態」として捉えました。彼の出発点は、マルクスの『資本論』第一巻で展開されている商品形態論です。マルクスはここで、一見すると自然で普遍的なものに見える商品が、実際には歴史的に特定の社会関係、すなわち資本主義的生産関係を反映したものであることを明らかにしました。
法的主体の抽象性と商品交換
パシュカーニスは、この商品形態論を法理論に適用します。彼は、法的主体、すなわち権利と義務の主体としての個人もまた、商品形態と同様に、資本主義社会に特有の抽象的な存在であると主張しました。商品交換の関係においては、交換当事者の具体的な個性や社会的地位は問われず、ただ平等な商品所有者としてのみ現れます。
法形式と商品交換の類似性
パシュカーニスによれば、法的主体の抽象性は、商品交換におけるこの抽象性を反映したものです。法は、社会関係を、自由で平等な個人間の契約関係として捉えます。しかし、この自由と平等は、商品交換における自由と平等と同様に、形式的なものに過ぎません。なぜなら、現実の資本主義社会においては、人々は決して平等ではなく、その社会的地位や経済力によって大きく制約されているからです。
法のイデオロギー的機能
このように、パシュカーニスにとって、法は単なる支配の道具ではなく、資本主義的生産関係を維持・再生産するためのイデオロギー的な装置としても機能します。法は、現実の社会的不平等を覆い隠し、自由で平等な個人からなる社会という虚構を維持することによって、資本主義の支配を正当化する役割を果たすのです。
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