パシュカーニスの法の一般理論とマルクス主義の批評
パシュカーニスの「法的形態の物質的条件」に対する批判
パシュカーニスは、「法の一般理論とマルクス主義」において、法形態を分析する上で、経済、特に商品交換を基盤とした唯物史観の立場をとっています。彼は、法的主体の抽象性、契約の自由、法的責任といった法的カテゴリーが、資本主義社会における商品交換の構造と論理から必然的に生じると主張しました。
パシュカーニスのこの主張は、多くの論者から支持を得ると同時に、様々な批判も呼びました。主な批判点は、法の還元主義、経済決定論、国家の役割の軽視、社会主義法の展望に関する問題などです。以下では、これらの批判について詳しく見ていきましょう。
法の還元主義
パシュカーニスの理論に対する最も一般的な批判の一つに、法を経済に還元しすぎているという点があります。彼は法を経済の単なる反映とみなし、法の相対的な自律性や、経済以外の要因、例えば政治、文化、イデオロギーなどが法に与える影響を十分に考慮していないという指摘があります。
例えば、法の歴史を紐解くと、経済関係の変化と法制度の変容が必ずしも一致しないケースや、経済的には説明できない法現象が数多く存在します。また、同じ経済体制を持つ社会でも、法制度は大きく異なる場合があります。これは、法が経済以外の要因からも影響を受けることを示唆しています。