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バーナード・クリックの政治の弁証に影響を与えた本

バーナード・クリックの政治の弁証に影響を与えた本

カール・シュミット著『政治的なものの概念』

バーナード・クリックの政治観を形作った書物の中でも、カール・シュミットの『政治的なものの概念』はひときわ重要な位置を占めています。1932年に刊行された本書は、ワイマール共和国末期の政治的混乱を背景に、リベラリズムに対する痛烈な批判を展開し、政治の本質を鋭く抉り出しました。クリックは、シュミットの思想を批判的に継承しつつも、その洞察力に深く影響を受け、自らの政治理論の構築に役立てました。

シュミットは、『政治的なものの概念』において、政治を「友と敵の区別」として定義しました。彼によれば、政治の本質は、倫理や経済、宗教といった他の社会領域とは異なり、究極的には暴力的な対抗関係に還元されます。政治共同体は、共通の敵に対する防衛という必要性から生まれ、そのアイデンティティは、敵との対決を通じて形成されます。

クリックは、シュミットの政治観に内在する危険性を十分に認識していました。シュミットの思想は、ナチズムの台頭を許した全体主義的な政治思想と親和性が高く、その危険性は看過できないものでした。しかし、クリックは、シュミットの思想を一方的に否定するのではなく、その洞察力から学び取ろうとしました。

クリックは、シュミットの「友と敵の区別」という概念を、国際政治の分析に援用しました。国際社会は、共通の政府や法秩序が存在しないアナーキー状態にあり、国家間の対立は常に潜在的に暴力的な対抗関係となる可能性を孕んでいます。クリックは、シュミットの思想を踏まえ、国際政治においても、権力と安全保障の問題が中心的な課題となることを指摘しました。

クリックは、シュミットの影響を受けながらも、その思想をそのまま受け入れることはしませんでした。クリックは、シュミットの政治観が、政治における倫理や妥協の可能性を軽視していると批判しました。クリックは、政治を「敵との闘争」としてのみ捉えるのではなく、「共通の利益のための対話と協力の場」としても捉えるべきだと主張しました。

クリックは、シュミットの思想を批判的に継承することによって、独自の政治理論を構築しました。クリックは、政治における権力と対立の重要性を認めながらも、同時に、倫理、対話、妥協の重要性を強調しました。クリックの政治理論は、シュミットの思想を批判的に乗り越えようとする試みとして理解することができます.

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