バタイユのニーチェについて
ニーチェにおける内なる経験とバタイユ
ジョルジュ・バタイユは、20世紀フランス思想界において特異な位置を占める思想家であり、その思想形成においてフリードリヒ・ニーチェの影響は決定的でした。バタイユはニーチェを、西洋形而上学の伝統に果敢に挑戦し、抑圧された生の力への肯定を唱えた先駆者として高く評価しました。
バタイユのニーチェ理解の特徴は、ニーチェを単なるニヒリズムの唱道者としてではなく、生の過剰と喪失の経験を通して、超越的な価値の彼岸に、生の肯定を見出そうとした思想家として捉えている点にあります。バタイユは、ニーチェの著作の中でも特に「道徳の系譜」や「悲劇の誕生」における、禁断や犠牲、ディオニュソス的な生の力への着目に強い共感を示しました。
バタイユはニーチェの思想を継承しつつも、独自の解釈を加えながら自身の思想へと展開させていきます。例えば、バタイユはニーチェにおける「力への意志」概念を、単なる支配欲や権力闘争としてではなく、有限な存在である人間が、自らの限界を超えて生の全体性に参与しようとする根源的な欲求として捉え直しました。