バジョットのイギリス憲政論を読んだ後に読むべき本
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イギリス政治制度論
(宇野重規 著)
バジョットの『イギリス憲政論』は、イギリス憲法の慣習と不文律の重要性を説いた古典的名著です。しかし、バジョットの著作は19世紀後半のイギリスを舞台としており、21世紀の現代社会においては、彼の洞察をそのまま適用するには限界があります。そこで、『イギリス政治制度論』を読むことで、バジョットの議論を現代に位置づけ、より深く理解することができます。
宇野重規氏の『イギリス政治制度論』は、現代イギリス政治を体系的に理解するための必読書と言えるでしょう。著者は、歴史的経緯を踏まえつつも、現代イギリス政治のダイナミズムを鮮やかに描き出しています。特に、議院内閣制、政党制、選挙制度、官僚制といった主要な政治制度について、バジョットの時代からの変遷を具体的に示しながら、現代における課題や展望を提示している点が特徴です。
例えば、バジョットは議院内閣制において、「国王は君臨すれども統治せず」という原則が確立していると主張しました。しかし、現代イギリスでは、EU離脱問題などを背景に、国王の政治的役割に対する議論が活発化しています。本書では、このような現代的な論点を踏まえ、バジョットの議論を再検討することで、イギリス政治制度のダイナミズムを浮き彫りにしています。
また、バジョットは、イギリスの二大政党制が政治の安定に寄与してきたと評価しました。一方、本書では、近年台頭している第三党の動向や、スコットランド独立問題など、二大政党制を揺るがす新たな潮流にも目を向け、現代イギリス政治の複雑さを明らかにしています。
このように、『イギリス政治制度論』は、バジョットの古典的な議論を現代に接続し、イギリス政治の「今」を理解するための視座を提供してくれる一冊です。バジョットの著作を読んだ後に、本書を手に取ることで、イギリス政治制度への理解をより深め、現代社会における憲法や政治制度のあり方について考えるための材料を得ることができるでしょう。