## バジョットのイギリス憲政論の翻訳
バジョットの『イギリス憲政論』は、これまで幾度となく日本語に翻訳されてきました。原著が英語で書かれているため、日本語版はその解釈や表現において、翻訳者によって微妙な違いが生じることがあります。本稿では、バジョットの『イギリス憲政論』の翻訳について、具体的な例を挙げながら考察します。
翻訳の難しさ
バジョットの著作は、19世紀後半のイギリスの政治状況を深く理解していることを前提に書かれています。そのため、当時のイギリスの政治制度、社会構造、文化背景などを現代の日本人にわかりやすく翻訳するには、様々な困難が伴います。
政治用語の翻訳
『イギリス憲政論』には、”Parliament”、”Cabinet”、”Crown”といった、イギリスの政治制度と密接に関連する用語が数多く登場します。これらの用語は、日本語にも対応する語が存在しますが、単純に置き換えるだけでは、バジョットの意図を正確に伝えることができません。
例えば、”Parliament”は、日本語では一般的に「議会」と訳されます。しかし、「議会」という言葉は、日本の国会や地方議会を連想させる場合があり、イギリスにおける議会制度のニュアンスを十分に伝えきれない可能性があります。
抽象的な概念の翻訳
バジョットは、”dignified”と”efficient”のように、抽象的な概念を対比させて論を展開することがあります。これらの概念は、文脈によっては「尊厳」と「効率」、「形式」と「実質」など、様々な日本語に訳すことができます。
しかし、どの訳語を選択するかによって、読者が受ける印象は大きく変わる可能性があります。翻訳者は、バジョットの主張を正確に伝えつつ、日本語としても自然な表現になるように、適切な訳語を選択する必要があります。
時代背景を反映した翻訳
バジョットの著作は、19世紀後半のイギリス社会における共通認識を前提に書かれています。そのため、現代の読者には理解しにくい表現や、当時の社会通念にそぐわない表現が含まれている場合があります。
翻訳者は、注釈などを加えることで、現代の読者にも理解できるように工夫する必要があります。ただし、注釈はあくまで補足的なものであり、原文の意味を歪曲するような解釈を加えることは避けなければなりません。