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ハーバーマスの後期資本主義における正当化の諸問題から得られるもの

ハーバーマスの後期資本主義における正当化の諸問題から得られるもの

後期資本主義における正当化の危機

ハーバーマスによれば、後期資本主義社会は、システムと生活世界の緊張関係によって特徴づけられます。システムとは、経済や政治といった、効率性や合理性を重視する領域を指します。一方、生活世界とは、文化、コミュニケーション、相互理解といった、人々の日常生活が営まれる領域を指します。

後期資本主義においては、システムが肥大化し、生活世界を侵食する傾向があります。たとえば、経済合理性が優先され、教育や医療といった本来は生活世界に属する領域までが市場原理に支配されるようになります。その結果、人々の価値観や規範が画一化し、コミュニケーションが断片化され、社会の統合が脅かされることになります。

コミュニケーション的行為の理論と正当化

ハーバーマスは、このような危機を克服するために、「コミュニケーション的行為の理論」を提唱します。コミュニケーション的行為とは、相互理解と合意形成を目指す対話を通じて、社会を統合していく行為を指します。

ハーバーマスは、コミュニケーション的行為には、以下の四つの妥当性請求が内在していると主張します。

* **真理性:** 発話が客観的な世界と一致していること
* **正当性:** 発話が規範的に受け入れられること
* **真実性:** 話者が誠実に発話していること
* **了解可能性:** 発話が文法的に正しく、理解可能であること

これらの妥当性請求は、対話を通じて批判的に吟味され、修正されることで、より妥当性の高い合意形成へと導かれます。このようなコミュニケーション的行為を通じて、システムの暴走を抑制し、生活世界における価値観や規範を再構築することが可能になるのです。

理想的な言論状況

ハーバーマスは、コミュニケーション的行為が十分に機能するためには、「理想的な言論状況」が必要であると主張します。理想的な言論状況とは、以下の条件が満たされた状況を指します。

* すべての人が対話に参加する機会が保証されていること
* 強制や圧力なしに、自由に意見を表明できること
* すべての主張が平等に扱われ、批判的に吟味されること

現実の社会では、このような理想的な言論状況は実現不可能です。しかし、ハーバーマスは、理想的な言論状況を規範的な理念として掲げ、可能な限りそれに近づける努力を続けることが重要であると主張しています。

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