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ハロッドの動態経済学序説の評価

## ハロッドの動態経済学序説の評価

主要な貢献

* **経済成長の分析に焦点を当てた先駆的な業績**: ハロッドは、それまで静的な均衡分析が主流であった経済学において、動学的な視点から経済成長を分析する枠組みを提示しました。これは、ケインズの静的な有効需要理論を動学化し、長期的な経済成長の問題に適用しようとする試みでした。

* **保証成長率(Warranted Growth Rate)の概念**: ハロッドは、完全雇用を維持するために必要な経済成長率として、「保証成長率」という概念を提唱しました。これは、資本の限界生産力と貯蓄率によって決定される成長率であり、経済が均衡状態を保ちながら成長していくための重要な条件を示しました。

* **ナイフエッジ定理**: ハロッドのモデルは、「ナイフエッジ定理」と呼ばれる不安定性を示唆することで知られています。これは、現実の経済では、保証成長率と現実の成長率が一致することは非常に難しく、一度乖離が生じると、その乖離は累積的に増大していく可能性を示唆するものです。

批判的な評価

* **非現実的な仮定**: ハロッドのモデルは、完全競争や一定の資本係数など、現実経済からかけ離れた仮定に基づいているという批判があります。これらの仮定は、モデルの単純化のためには必要でしたが、現実の経済メカニズムを十分に反映していないという指摘があります。

* **政策的含意の不明瞭さ**: ナイフエッジ定理は、経済成長の不安定性を示唆するものの、具体的な政策提言を導き出すには限界がありました。政府がどのように経済成長を安定化させ、保証成長率を実現できるのか、明確な指針を示すことができなかった点が批判されています。

* **後発理論との比較**: ハロッドのモデルは、その後登場したソローモデルをはじめとする新古典派成長理論と比較して、いくつかの点で限界がありました。特に、技術進歩を考慮していない点や、資本と労働の代替性を無視している点は、長期的な経済成長を分析する上での制約となりました。

歴史的意義

ハロッドの「動態経済学序説」は、その後の経済成長理論の発展に大きな影響を与えました。非現実的な仮定や限界点がある一方で、経済成長を動学的に分析する枠組みを提示した功績は大きく、その後の経済学研究に多大な影響を与えました。特に、ソローモデルをはじめとする新古典派成長理論は、ハロッドのモデルの問題点を克服しつつ、現代マクロ経済学の基礎を築きました。

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