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ハロッドの動態経済学序説の周辺

## ハロッドの動態経済学序説の周辺

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出版の背景

* **世界恐慌とケインズ経済学の影響**: ハロッドが「動態経済学序説」を執筆した1930年代は、世界恐慌の影響が色濃く残る時代でした。ジョン・メイナード・ケインズが「雇用、利子および貨幣の一般理論」を出版し、有効需要の原理に基づいた経済学が注目を集め始めた時期でもありました。ハロッド自身もケインズから大きな影響を受け、動態的な視点から経済成長を分析しようと試みました。
* **静学経済学からの脱却**: 当時の経済学は、均衡状態を分析する静学的な分析が主流でした。しかし、ハロッドは現実の経済が常に変化し続ける動態的なものであることに着目し、時間経過を明示的に考慮した分析の必要性を主張しました。

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「動態経済学序説」の内容

* **経済成長の分析**: ハロッドは、貯蓄、投資、生産能力の関係に着目し、経済が均衡を保ちながら成長するための条件を分析しました。特に、完全雇用を維持しながら成長を続けるためには、投資が適切な水準に保たれる必要があることを明らかにしました。
* **保証成長率**: ハロッドは、「保証成長率」という概念を提唱しました。これは、完全雇用を維持するために必要な投資の水準を実現できる経済成長率です。保証成長率は、貯蓄性向と資本係数によって決定されます。
* **経済成長の不安定性**: ハロッドは、現実の経済においては、実際の成長率が保証成長率と一致することは困難であり、経済成長は本質的に不安定であると主張しました。実際の成長率が保証成長率を上回るとインフレーションが発生し、下回ると失業が発生するという「ナイフエッジ」の状態が生じると示しました。

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後世への影響

* **経済成長論の発展**: ハロッドの動態経済学は、経済成長論の先駆的な研究として、その後の経済学者たちに大きな影響を与えました。特に、エブシー・ドーマーはハロッドのモデルを発展させ、ハロッド=ドーマーモデルとして知られるようになりました。
* **マクロ経済政策への影響**: ハロッドの分析は、政府が財政政策や金融政策によって経済成長を安定化させる必要性を示唆しました。彼の理論は、戦後の資本主義経済におけるケインズ政策の理論的な支柱の一つとなりました。
* **批判**: ハロッドの理論は、いくつかの仮定が非現実的であることや、経済の調整能力を過小評価しているなどの批判も受けました。しかし、彼の先駆的な研究は、現代経済学においても重要な意味を持ち続けています。

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