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ハロッドの動態経済学序説のテクスト

## ハロッドの動態経済学序説のテクスト

### ハロッドの経済学における位置づけ

ロイ・F・ハロッドは、ジョン・メイナード・ケインズの思想を継承し、発展させたイギリスの経済学者です。ケインズが短期的な経済分析に焦点を当てていたのに対し、ハロッドは長期的な経済成長のメカニズムを解明しようとしました。彼の主著である『動態経済学序説』(1939年)は、ケインズの静的な分析を動学化し、投資、貯蓄、経済成長の関係を分析した画期的な著作として評価されています。

### 動態経済学序説の内容

『動態経済学序説』は、経済成長の均衡条件と、その均衡が不安定であることを示すことで、資本主義経済が不安定な成長経路を辿る可能性を指摘した点が特徴です。

ハロッドは、経済成長率が保証成長率と一致する場合にのみ、完全雇用が維持される均衡成長が可能になると主張しました。保証成長率とは、企業が投資を継続するために必要な期待収益率を達成できる成長率を指します。

### 保証成長率と実際の成長率の乖離

問題は、現実の経済においては、保証成長率と実際の成長率が一致するとは限らない点にあります。ハロッドは、実際の成長率が保証成長率を上回ると、企業は投資を拡大し、経済は過熱状態に陥ると考えました。逆に、実際の成長率が保証成長率を下回ると、企業は投資を縮小し、経済は不況に陥るとしました。

### ハロッドのモデルの示唆する経済の不安定性

このように、ハロッドのモデルは、資本主義経済が本質的に不安定であり、完全雇用を維持しながら均衡成長を続けることは非常に困難であることを示唆しています。この点において、ハロッドの分析はケインズの思想と共通しており、政府による適切な経済政策の必要性を示唆するものと言えるでしょう。

### ハロッドの経済学への影響

『動態経済学序説』は、その後の経済成長論に多大な影響を与え、エブセイ・ドーマーやニコラス・カルドアといった経済学者による発展を促しました。これらの経済学者は、ハロッドのモデルをさらに発展させ、技術進歩や人口増加といった要素を組み込んだより複雑な経済成長モデルを構築しました。

### まとめ:動態経済学の出発点としての意義

『動態経済学序説』は、ケインズ経済学の枠組みを拡張し、長期的な経済成長の分析を本格的に開始した点で、経済学史上重要な位置を占めています。ハロッドのモデルは、資本主義経済の不安定性を明確に示すとともに、政府の経済政策の重要性を改めて認識させるものでした。

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