ハロッドの動態経済学序説に影響を与えた本
ケインズの「雇用、利子および貨幣の一般理論」の影響
ハロッドの1936年の著書「The Trade Cycle」や1939年の経済論文「An Essay in Dynamic Theory」は、後に彼の代表作となる「Towards a Dynamic Economics」(1948年)の基礎となりました。これらの著作の中で、ハロッドは経済成長の理論を構築しようと試みており、その理論は部分的にはジョン・メイナード・ケインズの1936年の著書「雇用、利子および貨幣の一般理論」に触発されたものでした。ハロッド自身もケインズの影響を認めており、「一般理論」を「あらゆる経済学の思考に革命をもたらした」と評しています。
ハロッドはケインズの著作から多くの重要な洞察を得ており、特に短期的な経済変動の分析から長期的な経済成長の分析へと焦点を移すことの重要性を認識しました。ケインズは主に景気循環、つまり経済活動の短期的な増減に関心を持っていました。他方、ハロッドはケインズの考え方を長期的な経済成長の分析に応用しようとしました。彼は、投資、貯蓄、技術進歩などの要因がどのように相互作用して経済成長を生み出すのかを理解しようと努めました。
ハロッドはまた、ケインズが提唱した有効需要の概念、つまり経済における総需要水準に影響を受けました。ケインズは、有効需要が完全雇用を達成し維持する上で重要な役割を果たすと主張しました。有効需要が不十分な場合、経済は不況に陥り、失業が発生すると彼は主張しました。ハロッドはケインズのこの考え方を発展させ、経済成長の文脈の中で有効需要の役割を探求しました。
しかし、ハロッドはケインズの著作に完全に満足していたわけではなく、ケインズは短期的な経済変動の分析に焦点を当てすぎており、長期的な経済成長の要因を十分に考慮していないと考えていました。さらにハロッドは、ケインズの著作は静的すぎると批判し、時間の経過に伴う経済の変化を分析できる、より動的なアプローチを求めていました。
全体的に見て、ケインズの「雇用、利子および貨幣の一般理論」は、ハロッドの「動態経済学序説」に大きな影響を与えました。特に、ハロッドはケインズから有効需要と短期経済変動に関する重要な洞察を得ました。しかし、ハロッドはケインズの著作を批判し、長期的な経済成長を考慮した、より動的な分析の必要性を強調しました。