## ハッブルの銀河の彼方と時間
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ハッブル宇宙望遠鏡と深宇宙の観測
ハッブル宇宙望遠鏡は、1990年の打ち上げ以来、地球の大気圏外から宇宙を観測し、数々の貴重なデータを提供してきました。その中でも特筆すべきは、「ハッブル・ディープ・フィールド」や「ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド」と呼ばれる、非常に遠い宇宙を観測したプロジェクトです。
これらのプロジェクトでは、一見何もないと思えるような、宇宙の非常に狭い領域を長時間観測し続けました。その結果、驚くべきことに、数千もの銀河が存在することが明らかになりました。これらの銀河は、宇宙が誕生してからわずか数億年後の、非常に若い時代の姿を見せてくれる貴重な手がかりとなります。
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宇宙膨張と赤方偏移
ハッブル宇宙望遠鏡の観測によって、宇宙が膨張していることは確定的となりました。宇宙膨張とは、宇宙空間自体が風船のように膨らんでいく現象です。この膨張により、地球から遠方の銀河ほど速い速度で遠ざかっているように観測されます。
そして、この遠ざかる運動は、光のドップラー効果によって「赤方偏移」という現象を引き起こします。救急車が近づいてくるときにはサイレンの音が高くなり、遠ざかるときには音が低くなるように、光も、私たちに近づいてくるときには波長が短くなり青っぽく見え、遠ざかっていくときには波長が長くなり赤っぽく見えます。
遠方の銀河の光は、宇宙膨張の影響で大きく赤方偏移しています。つまり、私たちが現在観測している遠方の銀河の姿は、過去の光であり、その銀河がまだ若かった頃の姿を見ていることになります。
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時間と空間の不可分性
ハッブル宇宙望遠鏡による深宇宙の観測は、「時間」と「空間」が不可分に結びついていることを私たちに示しています。遠方の銀河を観測することは、過去の宇宙を観測することであり、宇宙の歴史を紐解くことでもあります。
宇宙の膨張は、時間とともに変化するものであり、現在も進行中です。そのため、宇宙の膨張速度や、宇宙の未来を正確に予測することは、現代の科学をもってしても容易ではありません.
しかし、ハッブル宇宙望遠鏡をはじめとする様々な観測装置や、理論物理学の進歩によって、私たちは宇宙の謎に一歩ずつ近づいています。