ハイデガーの存在と時間に関連する歴史上の事件
第一次世界大戦とハイデガーの存在論
ハイデガーの主著『存在と時間』は、第一次世界大戦後の1927年に出版されました。この時代背景は、ハイデガーの哲学に深く影響を与えています。大戦の惨禍は、西洋文明の根底にある価値観や人間観そのものを揺るがし、多くの人々に虚無感や不安感をもたらしました。ハイデガーは、こうした時代の閉塞感を背景に、人間存在の根源的な意味を問う哲学を展開しようとしました。
技術の進歩と「世界-内-存在」
第一次世界大戦後、技術は急速に進歩し、人間の生活は大きく変化しました。ハイデガーは、こうした技術の進歩が、人間と世界の関係を根本的に変容させつつあると捉えました。彼は、『存在と時間』の中で、人間は、世界から切り離された孤立した存在ではなく、「世界-内-存在」として、常に世界と関わり合いながら存在していると主張しました。そして、技術の進歩によって、人間が世界と関わる様式が変化し、世界の「真実性」が失われつつあると批判しました。
ナチス政権とハイデガーの沈黙
1933年、ナチスが政権を掌握すると、ハイデガーは、フライブルク大学の学長に就任し、ナチス体制に協力する姿勢を示しました。彼は、ナチスの思想と自身の哲学との間に共通点を見出そうとし、ナチスを支持する発言も行いました。しかし、ナチスのユダヤ人迫害政策などに対しては、明確な批判を避けており、その沈黙は、現在でも大きな問題となっています。ハイデガー自身は、戦後、ナチスへの加担を反省する発言を残していますが、その責任を完全に免れることはできないでしょう。