## ノージックのアナーキー・国家・ユートピアの発想
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個人主義的自由主義
ノージックの思想は、個人主義的自由主義と呼ばれる立場に属します。これは、個人の権利を最大限に尊重し、国家の役割を最小限に抑えるべきだとする考え方です。ノージックは、個人が生まれながらにして持つ権利を「自らの身体、能力、所有物に対して自由に決定を下す権利」と定義し、国家はこの権利を侵害してはならないと主張しました。
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最小国家論
ノージックは、「アナーキー・国家・ユートピア」の中で、国家の正当性を論じています。彼は、アナーキー状態、すなわち国家が存在しない状態から出発し、個人の権利を保護するために最小限の国家が必要となると主張します。この最小限の国家は、暴力の独占、契約の執行、外部からの侵略に対する防衛という、限定的な役割のみを担います。ノージックは、福祉国家のように、個人の権利を侵害してまで富の再分配を行う国家を正当化しませんでした。
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所有権に関するエンタイトルメント理論
ノージックは、所有権に関する独自の理論である「エンタイトルメント理論」を展開しました。この理論は、所有物の正当な取得、所有物の正当な移転、不当な取得・移転に対する是正という3つの原則から成り立っています。正当な取得とは、所有者のいないものを最初に取得すること、正当な移転とは、自由な交換や贈与などによって所有権が移動することです。そして、不当な取得・移転に対しては、被害者に所有権を返還するなどの是正が必要となります。
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分配の正義への批判
ノージックは、当時の主流であった、結果の平等を目指す分配的正義を批判しました。彼は、個人の自由を尊重するならば、個人が自由に選択した結果として生じる経済的不平等を是正するべきではないと主張します。重要なのは、結果の平等ではなく、個人が権利を侵害されることなく、自由に経済活動を行うことができるかどうかだとしました。
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ユートピア多元主義
ノージックは、「アナーキー・国家・ユートピア」の最終章で、理想的な社会のあり方について論じています。彼は、単一の理想的な社会は存在せず、個人の多様な価値観を反映した、様々な共同体が共存する社会が望ましいと考えました。そして、個人が自由に共同体を選択し、退出できるような社会システムを提案しました。