ノイマンの大衆国家と独裁の世界
フランツ・ノイマンについて
フランツ・ノイマン(1900-1954)は、ドイツ生まれの政治学者、社会学者。フランクフルト学派の一員として知られ、ナチス政権の台頭を研究し、その全体主義体制の分析を行いました。1933年にナチスから逃れてイギリスに亡命し、その後アメリカに移住。彼の代表作『ビーヒーモス―現代国家の構造と実践』(1942年)は、ナチス・ドイツだけでなく、ソ連を含む全体主義国家の構造と権力機構を分析した重要な著作として知られています。
「大衆国家と独裁」の概要
ノイマンは、「大衆国家と独裁」という概念を用いて、当時の全体主義国家の特徴を捉えようとしました。彼は、伝統的な意味での「国家」や「独裁」では、ナチス・ドイツのような新しいタイプの政治体制を十分に理解できないと主張しました。
「大衆国家」の特徴
ノイマンは、「大衆国家」を以下のような特徴を持つ政治体制と定義しました。
* **大衆の動員と統合**: 全体主義国家は、イデオロギーやプロパガンダを通じて、大衆を政治に動員し、体制に統合しようとします。
* **組織の支配**: 国家は、政党、労働組合、青年団など、様々な組織を通じて社会を統制し、個人の自由を制限します。
* **指導者原理**: カリスマ的な指導者が絶対的な権力を持ち、個人崇拝が蔓延します。
* **テロと暴力の行使**: 反対派や少数派に対しては、秘密警察や暴力装置を用いて弾圧を加えます。
「独裁」の変容
ノイマンは、伝統的な意味での「独裁」は、単一の独裁者が絶対的な権力を掌握する体制を指すと説明しました。しかし、ナチス・ドイツのような全体主義国家では、単一の独裁者だけでなく、政党、官僚、軍部など、複数の権力主体が複雑に絡み合い、権力を共有している点が特徴です。
ノイマンの分析の意義
ノイマンの分析は、全体主義国家の構造と権力機構を理解する上で重要な視点を提供しました。彼は、全体主義国家を単なる「独裁」として捉えるのではなく、「大衆国家」という新しい概念を用いることで、その複雑な実態を明らかにしようと試みました。