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ニーブールのローマ史が扱う社会問題

ニーブールのローマ史が扱う社会問題

ローマの建国神話と現実のギャップ

ニーブールは、ローマの建国神話と現実の社会状況との間に大きなギャップが存在することに注目しました。建国神話は、ローマを正義と道徳を体現した理想的な国家として描いています。しかし、ニーブールは初期ローマ社会におけるパトリキとプレブスの対立、奴隷制の広範な存在、そして戦争による領土拡張と略奪など、現実には多くの問題を抱えていたことを指摘しています。

パトリキとプレブスの闘争

ローマ史初期において、パトリキと呼ばれる貴族階級とプレブスと呼ばれる平民階級の間に激しい政治的・経済的対立が生じました。ニーブールはこの対立を、ローマ社会における根本的な問題として捉えています。パトリキは特権的な地位を独占し、政治、経済、宗教などあらゆる面で優位に立っていました。一方、プレブスは政治参加や経済的な権利を制限され、厳しい生活を強いられていました。この不平等な社会構造が、ローマ社会における不安定要因となっていたことをニーブールは強調しています。

ローマ共和政の腐敗と衰退

ニーブールは、ローマ共和政の衰退を、社会内部の腐敗と道徳の堕落に求めています。共和政初期には、市民の間に公的精神と愛国心が満ち溢れていました。しかし、領土の拡大と富の蓄積が進むにつれて、奢侈と享楽が蔓延し、市民の間に私欲と無関心が広がっていきました。特に、グラックス兄弟の改革失敗以降、ローマ社会は内乱と混乱の時代へと突入していきます。ニーブールは、共和政の理念と現実の乖離が、共和政崩壊の要因となったと分析しています。

奴隷制とローマ社会

ローマ社会は、広範な奴隷制の上に成り立っていました。戦争捕虜や債務奴隷など、様々な形で人々が奴隷となり、過酷な労働に従事させられていました。ニーブールは、奴隷制がローマ社会にもたらした影響を多角的に分析しています。彼は、奴隷労働がローマ経済を支えていた一方で、自由労働者の賃金を低下させ、貧困層の拡大を招いたと指摘しています。また、奴隷制はローマ人の倫理観を歪め、残虐性と道徳の退廃をもたらしたとも述べています。

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