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ニーチェの道徳の系譜とアートとの関係

## ニーチェの道徳の系譜とアートとの関係

ニーチェにおける芸術の二つの側面

ニーチェにとって、芸術は人間の文化的活動において重要な役割を果たしており、「道徳の系譜」においても、その考察は深く結びついています。彼の芸術観は大きく二つに分けて考えることができます。

一つは、**芸術を道徳や形而上学といった理性的な枠組みから解放する力**と捉える側面です。ニーチェは、従来の道徳、特にキリスト教的な道徳観が、人間の生命力や創造性を抑圧してきたと批判します。「道徳の系譜」第一論文で展開される「善悪の彼岸」の思想は、既存の道徳の枠組みを超えた、より根源的な生の肯定へと向かうものであり、芸術はこのような枠組みを超越する力を持つものとして位置づけられます。

もう一つは、**芸術を文化を創造し、人間を高める力**と捉える側面です。ニーチェは、ギリシャ悲劇を例に挙げ、芸術が人間存在の苦悩や矛盾と向き合い、それを肯定的に昇華する力を持つことを論じています。これは「道徳の系譜」第三論文において、「力への意志」と関連付けられます。「力への意志」とは、自己を超克し、より高みへと向かう力であり、芸術はこのような力への意志を体現するものとして捉えられています。

芸術と「ルサンチマン」

ニーチェは、「道徳の系譜」第一論文において、「ルサンチマン」という概念を導入し、西洋道徳の起源を分析します。「ルサンチマン」とは、弱者が強者に対して抱く、怨恨や復讐心、そして価値の転倒による自己正当化といった複雑な感情を指します。

ニーチェは、ルサンチマンが芸術にも影響を与えていることを指摘します。例えば、禁欲主義的な道徳観は、人間の情熱や欲望を否定し、精神的な苦悩や自己犠牲を美化するような芸術を生み出すとされます。このような芸術は、一見すると高尚で倫理的に見えますが、実際にはルサンチマンに基づいた弱者の道徳を反映したものであるとニーチェは批判します。

芸術と「ディオニュソス的」と「アポロン的」

ニーチェは、初期の著作である「悲劇の誕生」において、ギリシャ悲劇を分析し、「ディオニュソス的」と「アポロン的」という二つの芸術衝動を提示しました。ディオニュソス的なものは、陶酔や熱狂、生の根源的な力と結びついたものであり、アポロン的なものは、秩序や形式、理性と結びついたものです。

「道徳の系譜」においても、この二つの衝動は重要な役割を果たします。ニーチェは、ルサンチマンに基づく道徳観が、ディオニュソス的な生の affirmation を抑圧し、アポロン的な理性や秩序を過度に重視する傾向を生み出したと主張します。そして、真に力強い芸術は、ディオニュソス的な生のエネルギーを取り込み、それをアポロン的な形式によって昇華させることによって生まれると考えました。

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