## ニーチェの善悪の彼岸の位置づけ
###
出版と時代背景
「善悪の彼岸」は、フリードリヒ・ニーチェによって1886年8月に出版された著作です。これは、ニーチェの主著と目される「力への意志」(1889年、未完) の直前に書かれました。「力への意志」は、ニーチェ自身が構想し、その構想を詳細に記したノートを元に死後に妹のエリーザベトによって編集、出版された経緯があり、ニーチェの意図が正確に反映されているかについては議論があります。一方、「善悪の彼岸」はニーチェ自身が完成させ、生前に出版した著作であるため、ニーチェの思想を理解する上で重要な作品とされています。
###
内容と構成
本書は、全部で9つの章と、最後に置かれた詩「ツァラトゥストラの序歌」から構成されています。各章には、アフォリズムと呼ばれる短い断章が多数収録されています。アフォリズムとは、格言や警句のように、ある特定の思想や主張を簡潔に表現した文章を指します。
「善悪の彼岸」は、従来の道徳、哲学、宗教に対する批判を展開し、ニーチェ独自の思想を提示しています。ニーチェは、西洋文明を支えてきたキリスト教的な価値観や、ソクラテス以来の伝統的な哲学を「退廃的なもの」と批判し、それらに取って代わる新しい価値観の必要性を説いています。
###
主要な概念
本書で展開される主要な概念としては、「ルサンチマン(ressentiment)」、「主人道徳と奴隷道徳」、「力への意志」などが挙げられます。
* **ルサンチマン:** 弱者が強者に対して抱く、無意識のうちに彼らを貶めようとする怨恨や復讐心。
* **主人道徳と奴隷道徳:** 強者が自分たちの力や生命力を肯定的に捉える「主人道徳」と、弱者が強者を恐れ、ねたみ、その復讐として道徳を作り出したとする「奴隷道徳」。
* **力への意志:** 生命の本質をなす、絶えず成長し、自己を超越し、より高みを目指そうとする力。
これらの概念を用いながら、ニーチェは既存の価値観を転覆し、「超人」という新しい人間の理想像を提示しようと試みています。
Amazonで詳細を見る
読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。