ニーチェのこの人を見よの原点
「この人を見よ」の初出
「この人を見よ」という表現は、ニーチェの著作 **『ツァラトゥストラはかく語りき』** の中で初めて登場します。 具体的には、第1部の第3章「旧来の徳について」において、ツァラトゥストラが語る言葉として用いられています。
聖書との関連
「この人を見よ」という表現は、新約聖書における **イエス・キリストに対する言葉** を踏まえていると考えられています。 福音書には、イエスが捕縛される場面で、ローマ総督ピラトが群衆に対して「Ecce Homo」（エッケ・ホモ、ラテン語で「この人を見よ」の意）と叫ぶ場面が登場します（ヨハネによる福音書 19章5節）。
ニーチェにおける表現の意味
ニーチェは、この聖書の一節を意識しつつ、**従来の価値観からの脱却と新しい価値の創造を象徴する言葉** として「この人を見よ」を用いたと解釈されています。 すなわち、ツァラトゥストラは、旧来の道徳や価値観に囚われることなく、自ら新しい価値を創造していく「超人」となるべき存在を象徴しており、「この人を見よ」という言葉は、**既存の価値観から自由になった人間像を示すと同時に、人々に対して新たな価値観への転換を促す言葉** となっています。