## ニュートンの自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)の思想的背景
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古代ギリシャの思想
ニュートンの自然哲学は、古代ギリシャ、特にアリストテレスやプラトンの思想に深く根ざしています。
* **アリストテレスの自然哲学:** アリストテレスは、宇宙は地球を中心とした同心円状の天球からなり、それぞれの天球には固有の運動があるとしました。また、地上界と天界では異なる法則が働くと考え、地上界の運動は目的論的な原理によって説明されるとしました。
* **プラトンのイデア論:** プラトンは、感覚的に捉えられる現実世界は、イデアという不変かつ完全な形の世界の影に過ぎないと考えました。そして、真の知識は感覚ではなく理性によってイデアを把握することによってのみ得られるとしました。
ニュートンは、アリストテレスの宇宙観や運動論を批判的に継承しつつ、プラトンの数学的調和の重視という考え方を発展させました。彼は、天体と地上の現象を統一的に説明する普遍的な法則を発見しようと試み、その法則を数学的に表現することを目指しました。
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ルネサンス期の科学革命
16世紀から17世紀にかけて、ヨーロッパではルネサンス期の人文主義の影響を受けて、古代ギリシャの学問が復興し、自然に対する新たな視点が生まれました。
* **コペルニクスの地動説:** コペルニクスは、地球ではなく太陽が宇宙の中心に位置するという地動説を唱えました。これは、アリストテレス以来1000年以上も信じられてきた宇宙観を覆す革命的な出来事でした。
* **ケプラーの惑星運動の法則:** ケプラーは、ティコ・ブラーエの長年の観測データに基づいて、惑星の運動に関する3つの法則を発見しました。これらの法則は、惑星の運動を数学的に記述したもので、後のニュートンの万有引力の法則の発見に大きく貢献しました。
* **ガリレオの力学:** ガリレオは、望遠鏡を用いた天体観測や、斜面の実験などを通して、物体の運動に関する基礎的な法則を発見しました。彼は、慣性の法則や落体の法則などを実験的に検証し、数学を用いて運動を記述しました。
ニュートンは、これらの先人たちの業績を土台として、独自の自然哲学を構築しました。彼は、コペルニクスやケプラーの宇宙観を受け入れ、ガリレオの力学を発展させました。そして、数学を自然を理解するための言語として重視し、自然現象を数学的に記述することを通して、その背後に隠された法則を明らかにしようとしました。