## ニュートンの自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)に影響を与えた本
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ヨハネス・ケプラーの「宇宙の神秘」(Mysterium Cosmographicum)
ヨハネス・ケプラーの「宇宙の神秘」(1596年)は、天文学と数学の分野において画期的な業績であり、アイザック・ニュートンの「プリンキピア」に直接的な影響を与えた重要な書物です。ケプラーは、本書の中で、当時の宇宙観を覆す革新的な理論を展開し、惑星運動に関する新たな知見を提示しました。
ケプラーはティコ・ブラーエの膨大な天文観測データを用いて、惑星の軌道が完全な円ではなく楕円であることを発見し、これが後に「ケプラーの第一法則」として知られるようになりました。 また、「ケプラーの第二法則」では、惑星と太陽を結ぶ線が一定時間に描く面積は一定であることを示し、惑星の速さが太陽からの距離によって変化することを明らかにしました。
これらの法則は、従来の天動説に基づく宇宙観を覆し、太陽を中心とした地動説を支持する強力な根拠となりました。 ケプラーは、本書の中で、惑星の運動の背後にある物理的なメカニズムを解明するには至らなかったものの、その後のニュートンの万有引力の法則の発見に繋がる重要な布石となりました。
「プリンキピア」においてニュートンは、ケプラーの法則を数学的に証明し、万有引力の法則から導き出せることを示しました。これは、ケプラーの経験的な法則を、ニュートンが普遍的な法則へと昇華させたことを意味します。「宇宙の神秘」は、ニュートンに天体運動の法則性について深く考察するきっかけを与え、万有引力の法則の発見へと導く重要な役割を果たしたと言えるでしょう。