ナボコフの青白い炎を読んだ後に読むべき本
ナボコフの技巧に酔いしれたあなたへ贈る、迷宮的文学体験:ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『伝奇集』
「青白い炎」を読み終えたあなたは、きっと言葉の迷宮から解放された安堵と、再びその深淵に潜りたくなる衝動との間で揺れているでしょう。複雑に絡み合った注釈、現実と虚構の境界を曖昧にする仕掛け、そしてその背後に透けて見える作者の意図。ナボコフが仕掛ける文学的ゲームは、読者を翻弄し、知的好奇心を極限まで刺激するものでした。
もしあなたがこの知的興奮を再び味わいたいと願うなら、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの「伝奇集」こそが、次に手に取るべき一冊です。ボルヘスは、ナボコフと同様にメタフィクション、言葉遊び、複雑な構造の作品を得意とした作家として知られています。「伝奇集」は、迷宮、鏡、無限、虚構といったテーマを扱い、現実と非現実の狭間で読者を翻弄する短編集です。
例えば、「バベルの図書館」では、宇宙全体が書物で埋め尽くされた図書館が舞台となります。そこにはあらゆる言語で書かれた、あらゆる可能性を秘めた書物が存在しますが、そのほとんどは意味不明な文字の羅列に過ぎません。読者は、この果てしない図書館をさまよう主人公とともに、知識と真実、そして存在の意味を問い直す旅に出ることになります。
また、「円環の廃墟」では、夢の中で人間を創造しようとする男が登場します。彼は、細部まで完璧に作り上げた夢の男を現実世界に送り込みますが、やがてその創造物は彼自身の存在を脅かす存在へと変貌していきます。現実と虚構、創造主と被造物という、深遠なテーマを扱った作品です。
「伝奇集」は、ナボコフの作品と同様に、一筋縄ではいかない難解な作品集です。しかし、読み進めるうちに、散りばめられた断片が次第に繋がり、複雑なパズルを解き明かすような知的興奮と、深い感動を得られるはずです。ボルヘスの織りなす迷宮文学の世界は、「青白い炎」で味わった文学的冒険の興奮を、さらに深化させてくれるでしょう。