## ドワーキンの法の帝国の世界
###
法の帝国とは
「法の帝国」は、アメリカの哲学者・法学者であるロナルド・ドゥウォーキンが提唱した、法の解釈と司法のあり方に関する概念です。ドゥウォーキンは、この概念を著書 “Law’s Empire” (1986) の中で展開しました。
###
法の解釈における「唯一の正解」
ドゥウォーキンの法哲学において重要な点は、すべての法的問題には「唯一の正解」が存在するという主張です。これは、法が解釈の余地を残す曖昧なものではなく、常に正しい答えを導き出すことができる体系であることを意味します。
###
鎖小説としての法
ドゥウォーキンは、法を「鎖小説」に喩えています。鎖小説とは、複数の作家が順番に章を書き継いでいく小説の形式です。法も同様に、過去の判例や法律が積み重ねられていくことで形成されます。裁判官は、過去の判例や法律を解釈し、その解釈に整合する形で新たな判決を下すことで、法の鎖を繋いでいく役割を担います。
###
整合性と最良適合
ドゥウォーキンによれば、裁判官は「整合性」と「最良適合」という二つの基準に基づいて、法を解釈する必要があります。整合性とは、過去の判例や法律との整合性を保つことであり、最良適合とは、既存の法体系の中で最も倫理的に優れた解釈を選択することです。
###
理想的裁判官「ヘラクレス」
ドゥウォーキンは、彼の法哲学を体現する理想的な裁判官として、「ヘラクレス」という架空の人物を登場させます。ヘラクレスは、優れた知性と倫理観を持ち、あらゆる法的資料を完全に理解し、整合性と最良適合の基準に基づいて、唯一の正しい判決を導き出すことができる存在です。