## ドッブの価値と分配の諸理論の選択
ドッブの価値と分配の諸理論における選択問題
モーリス・ドッブは、その経済学研究において、価値と分配の理論に関する古典派経済学とマルクス経済学の相違点を詳細に分析しました。彼の分析の中心には、「選択問題」として知られる概念が存在します。ドッブは、異なる経済理論が、生産要素への報酬分配と社会全体の富の分配を決定するメカニズムをどのように説明するのかを探求しました。
古典派経済学における選択
古典派経済学では、価値は生産要素の希少性によって決定されるとされます。労働、資本、土地といった要素は、それぞれの貢献度に応じて報酬を受け取ります。この見解では、市場メカニズムを通じて、各要素の需給が均衡し、自然な価格が決定されると考えられています。
マルクス経済学における選択
一方、マルクス経済学は、価値の源泉を労働に求め、搾取の概念を中心に分配を分析します。資本家は労働力を購入し、労働者が生産する価値の一部を剰余価値として取得することで利潤を得るとされます。この見解では、生産手段の私的所有が、労働者に対する搾取と不平等な分配を生み出す構造的な要因として位置付けられます。
ドッブの分析
ドッブは、古典派経済学における「選択」が、既存の資源配分と所得分配を正当化するイデオロギー的な機能を果たしていると批判しました。彼は、市場メカニズムが、社会的に構築された力関係や制度的要因の影響を受けずに、中立的に作用するという考え方に疑問を呈しました。
ドッブは、マルクス経済学の分析枠組みを用いることで、資本主義社会における分配の不平等と階級構造をより適切に理解できると主張しました。彼は、生産手段の所有構造が、所得分配と社会全体の富の配分を決定する上で、根本的な役割を果たしていると強調しました。