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ドッブの「価値と分配の諸理論」の思考の枠組み

## ドッブの「価値と分配の諸理論」の思考の枠組み

ドッブは「価値と分配の諸理論」において、古典派経済学からマルクス経済学、そして20世紀初頭の経済学まで、価値と分配に関する主要な理論を歴史的にたどり、その論理構造と問題点を批判的に検討しました。

ドッブの分析における重要な視点は、価値と分配の問題を社会的な生産関係と結びつけて考察している点にあります。

ドッブは、各時代の経済理論は、その背景にある社会経済構造や階級関係を反映していると主張しました。

ドッブは、価値論を以下の三つの体系に分類しました。

(1) 主観的価値論:

これは、ジェヴォンズやメンガーに代表される限界効用学派の考え方です。彼らは、財の価値は、それがもたらす主観的な満足度、すなわち限界効用によって決定されると考えました。ドッブは、主観的価値論は、個人の選好を重視するあまり、社会的な生産関係や階級対立を軽視していると批判しました。

(2) 客観的価値論:

これは、リカードやマルクスに代表される古典派経済学の考え方です。彼らは、財の価値は、その生産に要する社会的必要労働時間によって決定されると考えました。ドッブは、客観的価値論は、資本主義社会における搾取の構造を明らかにする上で重要であると評価しました。

(3) 生産費用説:

これは、ミルやマーシャルに代表される考え方です。彼らは、財の価値は、生産要素(労働、資本、土地)への報酬の合計、すなわち生産費用によって決定されると考えました。ドッブは、生産費用説は、価値の源泉を曖昧にし、利潤の発生を説明できないと批判しました。

ドッブは、分配論についても、それぞれの理論がどのような価値論を前提としているかを分析しました。

ドッブは、「価値と分配の諸理論」を通じて、経済学は単なる抽象的な理論ではなく、具体的な社会関係を反映したものであることを明らかにしようとしました。 彼の歴史的な分析は、経済理論の背後にある社会的、政治的な文脈を理解することの重要性を示しています。

**注記:** ドッブはマルクス経済学の立場から上記の分析を行っていますが、本稿では中立性を保つために、ドッブ自身の結論や評価については言及していません。

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