ドストエフスキーの賭博者に関連する歴史上の事件
ドストエフスキー自身の賭博癖
「賭博者」を語る上で欠かせないのは、作者自身の賭博への傾倒でしょう。ドストエフスキーは若い頃からルーレットに熱中し、その結果として深刻な経済的困窮に陥りました。彼はしばしば借金に追われ、原稿料を前借りしてまで賭博にのめり込みました。
「賭博者」は、そんな彼の自身の体験を色濃く反映した作品と言えます。主人公であるアレクセイ・イワノヴィッチの苦悩は、ドストエフスキー自身の内面を投影したものであり、現実の賭博場での興奮と絶望が克明に描かれています。
19世紀ロシアにおける賭博の流行
ドストエフスキーが生きた19世紀のロシアでは、賭博が上流階級から庶民まで幅広く流行していました。カジノは社交の場として機能し、人々は一攫千金を夢見て賭博に興じていました。
当時のロシア社会には、農奴解放による社会不安や西欧化の影響など、人々の心に不安や焦燥感を抱かせる要因が多く存在していました。賭博はそうした閉塞感から逃れ、一時の興奮と快楽を求める手段として人々を魅了したと言えるでしょう。
「賭博者」は、当時のロシア社会に蔓延していた賭博熱を背景に、その中で翻弄される人々の姿をリアルに描写しています。アレクセイを取り巻く登場人物たちは、それぞれの思惑や欲望を抱え、賭博にのめり込んでいく様が描かれています。