## ドストエフスキーの貧しき人びとと作者
ドストエフスキーのデビュー作
「貧しき人びと」は、フョードル・ドストエフスキーが1846年に発表した処女作です。24歳という若さで書き上げられたこの作品は、当時の文壇から高く評価され、ドストエフスキーは文壇の寵児として華々しいデビューを飾りました。
当時のロシア社会と「貧しき人びと」
19世紀半ばのロシアは、農奴制の矛盾が深刻化し、貧富の差が拡大していました。都市部では、貧困にあえぐ人々がスラム街で劣悪な環境に置かれていました。「貧しき人びと」は、そうした当時の社会状況を背景に、貧困の中で懸命に生きる小役人マカール・ジェーヴチキンと、彼を慕う孤児の少女ヴァルヴァーラの交流を描いた書簡体小説です。
「感動させる才能」
「貧しき人びと」は、批評家ヴィッサリオン・ベリンスキーによって「新たなゴーゴリ」と絶賛されました。ベリンスキーは、ドストエフスキーの「貧しい人々に対する深い同情と、その生活をありのままに描く感動させる才能」を高く評価しました。
影響を受けた文学
ドストエフスキーは、「貧しき人びと」を執筆する上で、ニコライ・ゴーゴリの影響を強く受けています。特に、ゴーゴリの「外套」は、社会的弱者の悲哀を描いた作品として、ドストエフスキーに大きな影響を与えたと考えられています。また、「貧しき人びと」は書簡体小説という形式をとっており、これは、サミュエル・リチャードソンの「パメラ」やヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの「若きウェルテルの悩み」といった先駆的な書簡体小説の影響が指摘されています。