## ドストエフスキーの罪と罰の原点
ドストエフスキー自身の体験
ドストエフスキーは、「罪と罰」の執筆前に、実際に罪を犯し、その罪に対する罰としてシベリア流刑の経験をしています。この過酷な体験は、彼自身の内面に深い影を落とし、後の作品に大きな影響を与えました。「罪と罰」の主人公ラスコーリニコフが抱える罪の意識や、罰による苦悩は、ドストエフスキー自身の体験が色濃く反映されていると言えるでしょう。
19世紀ロシア社会の状況
「罪と罰」が書かれた19世紀ロシアは、近代化の波に揺れる激動の時代でした。資本主義の台頭は貧富の格差を拡大させ、社会不安を増大させていました。合理主義や無神論が広まる一方で、伝統的な価値観や宗教観は揺らぎを見せていました。このような時代背景の中、ドストエフスキーは、人間存在の本質や善悪の根源といった根源的な問いを作品に投げかけました。
ナポレオンの超人思想
「罪と罰」の着想には、ナポレオンの超人思想が影響を与えたと言われています。超人思想とは、一部の優れた人間は、凡人には許されない行為をしてもよいとする考え方です。ラスコーリニコフは、自らを「選ばれた人間」と位置づけ、自身の犯した罪を正当化しようとします。ドストエフスキーは、この思想の危険性を作品を通して批判的に描こうとしたと考えられます。