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ドストエフスキーの悪霊の思考の枠組み

## ドストエフスキーの悪霊の思考の枠組み

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ニヒリズムと社会主義

「悪霊」は19世紀後半のロシアを舞台に、伝統的な価値観と社会秩序が崩壊していく中で、新たな思想やイデオロギーに魅了される人々の姿を描いています。 特に作中で重要な役割を果たすのが、当時のロシアで広がりを見せていた「ニヒリズム」と「社会主義」という二つの思想です。

ニヒリズムは、既存のあらゆる権威、道徳、価値観を否定する思想です。作中では、主人公スタヴローギンをはじめとする若い世代を中心に、このニヒリズムが蔓延しています。彼らは、従来の宗教、道徳、社会規範などを「時代遅れ」と見なし、虚無感と絶望感に苛まれています。

一方、社会主義は、当時のロシアでは比較的新しい思想であり、資本主義の矛盾を批判し、平等で公正な社会の実現を目指していました。作中では、社会主義運動に関わる登場人物が複数登場し、彼らの活動を通して、当時のロシア社会における社会主義の広がりと、それが人々に与えた影響を窺い知ることができます。

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個人と社会の対立

「悪霊」では、ニヒリズムや社会主義といった思想の影響下にある個人が、既存の社会秩序や倫理観とどのように対峙していくのかが描かれています。登場人物たちは、それぞれの思想や信念に基づいて行動しますが、その結果として、しばしば社会との間に深刻な対立を生み出します。

例えば、スタヴローギンは、ニヒリズムに基づき、あらゆる価値観を否定し、無軌道な行動を繰り返します。彼の行動は、周囲の人々に混乱と不幸をもたらし、最終的には悲劇的な結末を迎えます。一方、社会主義運動家であるヴェルホヴェンスキーは、自身の理想とする社会を実現するために、テロや暴力も辞さない過激な思想を持っています。彼の行動は、社会に大きな混乱をもたらし、多くの人々を巻き込むことになります。

このように、「悪霊」は、近代化が進む19世紀後半のロシア社会を背景に、個人と社会の対立、思想の対立、そしてその先に待ち受ける悲劇を描いた作品と言えるでしょう。

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信仰と道徳の喪失

「悪霊」では、ニヒリズムの広がりによって、伝統的な信仰や道徳が揺らいでいく様子も描かれています。登場人物たちは、神への信仰や道徳的な規範を失い、精神的な拠り所を失っています。

作中では、スタヴローギンが象徴的な存在として描かれています。彼は、神の存在を否定し、あらゆる価値観を否定することで、精神的な空虚さに苦しんでいます。そして、その空虚感を埋めるために、自傷行為や快楽に溺れていきます。

また、他の登場人物たちも、信仰や道徳の喪失によって、様々な苦悩を抱えています。 キリーロフは、神が存在しないのであれば、人間は自らの意志で自由に生きることができるはずだと考え、自殺を選びます。シャートフは、かつては熱心なスラヴ主義者でしたが、信仰を失ったことで、精神的な支えを失い、絶望に陥ります。

このように、「悪霊」は、信仰と道徳の喪失が、当時のロシア社会に生きる人々の精神に大きな影を落としていることを描き出しています。

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