## ドストエフスキーの悪霊の対称性
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登場人物の対称性
* **ニコライ・スタヴローギンとピョートル・ヴェルホーヴェンスキー**: 作品の中心人物であるスタヴローギンとヴェルホーヴェンスキーは、思想と行動において対照的な存在として描かれています。スタヴローギンはニヒリズムに染まりながらも苦悩し、行動を起こせない一方で、ヴェルホーヴェンスキーはニヒリズムを暴力革命に利用しようとします。しかし、両者とも自己中心的な性格で周囲を不幸に陥れる点では共通しています。
* **シャートフとキリーロフ**: シャートフはかつては熱心な革命家でしたが、信仰に回帰し、ロシアの伝統的な価値観に救済を求めます。一方、キリーロフは神を否定し、人間の自由意志を証明するために自殺を選択します。正反対の思想を持つ二人ですが、どちらも絶対的なものに救いを求めている点は共通しています。
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出来事の対称性
* **冒頭と結末**: 作品は、ステパン・トロフィーモヴィッチの静かな日常から始まり、彼の死と街の混乱で幕を閉じます。これは、静けさから混乱へ、秩序から無秩序への変化を対比的に示しています。
* **祝賀会と殺人**: 物語の中盤で描かれる華やかな祝賀会は、その後、陰謀と殺人が横行する暗い展開とは対照的です。この対比は、一見華やかな社会の裏に潜む暴力と混沌を浮き彫りにしています。
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モチーフの対称性
* **父と子**: 作品全体を通して、父と子の対立が繰り返し描かれます。ステパンとワルワーラ、スタヴローギンと彼の母親、シャートフと彼の思想的な「息子」であるヴェルホーヴェンスキーなど、世代間の断絶と葛藤が重要なテーマとなっています。
* **光と影**: 明るい光と暗い影の対比も作品全体に見られます。祝賀会の華やかさと殺人の闇、スタヴローギンの美貌と彼の内面の醜悪さなど、光と影のコントラストを通して、人間の心の二面性や社会の矛盾が表現されています。