## ドゥオーキンの権利論の技法
解釈としての法
ドゥオーキンは、法を解釈活動として捉えています。彼によれば、裁判官は過去の判例、法規範、法的原則などを解釈し、その事案に最も適合する解決策を見つけ出すことが求められます。これは、法が単なる規則の集合体ではなく、解釈を通して絶えず発展していく動的なシステムであることを意味します。
権利としてのトランプ
ドゥオーキンは、個人の権利を「トランプ」として捉え、それが政策に対して優位性を持つと主張します。つまり、個人の権利は、たとえ社会全体の利益のためであっても、安易に侵害されてはならないということです。彼は、この考え方を「権利はトランプのように、政策というゲームにおいて切り札の役割を果たす」と表現しました。
構成的解釈
ドゥオーキンは、法の解釈において「構成的解釈」という手法を用いることを提唱します。これは、過去の判例や法原則を単に適用するのではなく、それらを統合し、より説得力のある解釈を構築していく作業を意味します。彼は、この過程で「整合性」と「最良適合性」という2つの基準を用いることを重視します。
整合性
整合性とは、過去の判例や法原則との整合性を図ることです。ドゥオーキンは、裁判官が過去の判例や法原則を無視したり、恣意的に解釈することを批判し、法体系全体の統一性を維持する必要性を強調します。
最良適合性
最良適合性とは、過去の判例や法原則を解釈する際に、それらを最も魅力的に解釈することを意味します。ドゥオーキンは、単に過去の判例や法原則に形式的に従うのではなく、その背後にある価値観や原則を理解し、それらを現代社会にふさわしい形で再解釈することが重要であると主張します。
ヘラクレス裁判官
ドゥオーキンは、理想的な裁判官を「ヘラクレス裁判官」と呼びます。ヘラクレス裁判官は、優れた知性と忍耐力を持ち、過去の判例や法原則を徹底的に調査し、その事案における「唯一の正しい解答」を導き出すことができる存在です。これは、法が解釈によって見出されるべき客観的な真実を含んでいるというドゥオーキンの信念に基づいています。
これらの技法は、ドゥオーキンの権利論を支える重要な要素であり、彼の思想を理解する上で欠かせないものです。