## トルストイの戦争と平和の原点
執筆のきっかけ
トルストイは1856年、クリミア戦争に従軍した経験を元に、「1805年」という作品を執筆し始めました。これが後に「戦争と平和」へと発展していく第一歩となります。当初は、戦争から帰還した後のデカブリストの反乱をテーマにする予定でしたが、物語の構想は徐々に変化していきました。
時代背景と個人的な経験
「戦争と平和」の舞台は、ナポレオン戦争下のロシアです。トルストイ自身、クリミア戦争に従軍し、セヴァストポリの戦いを経験しました。この経験を通して、戦争の現実や人間の心理、社会構造について深く考察するようになりました。
家族と結婚生活の影響
1862年、トルストイは16歳年下のソフィヤ・アンドレーエヴナと結婚しました。結婚当初は幸福な日々を送っていましたが、次第に夫婦関係は悪化していきます。こうした結婚生活の経験は、「戦争と平和」に登場する夫婦の描写に影響を与えたと考えられています。
歴史観と哲学的探求
トルストイは、歴史における個人の役割や自由意志、歴史の必然性といった問題に関心を抱いていました。彼は、歴史は英雄や指導者によってではなく、民衆の力によって動くと考えていました。こうした歴史観は、「戦争と平和」の根底に流れるテーマの一つとなっています。
文学的影響
トルストイは、プーシキンやゴーゴリといったロシア文学の巨匠から影響を受けていました。また、当時のヨーロッパ文学、特にスタンダールのリアリズム小説やバルザックの社会小説からも影響を受けています。