トルストイの戦争と平和の主題
歴史における個人の役割
トルストイは、歴史の動きにおいて個人が果たす役割について考察し、ナポレオンのような歴史的指導者でさえ、歴史の流れをコントロールすることはできないと主張しています。彼は、歴史は個人の意志の総体、つまり、無数の目に見えない力によって形作られるものであり、英雄や指導者によって決定されるものではないと考えています。作中では、ピエールやアンドレイといった登場人物たちが、歴史のうねりの中で翻弄されながらも、自らの生と向き合おうとする姿が描かれています。
家族と愛の力
戦争と混乱の時代においても、家族や愛は人々に希望と生きる力を与えます。ロストフ家の温かい家族愛、ピエールとナターシャの結婚に見られるように、トルストイは家族や愛こそが、人間の幸福にとって不可欠な要素であると描いています。一方で、アンナ・パブロヴナ・シェレルやクーラギン家のような、打算や社交界での成功を重視する人々の姿を通して、真の愛や家族の大切さを浮き彫りにしています。
精神的な探求
作中の登場人物たちは、人生の意味や幸福、死といった根源的な問題について悩み、苦しみながらも、それぞれの方法で答えを探し求めます。ピエールはフリーメーソンに傾倒したり、農民の生活に触れたりしながら、自己犠牲と精神的な成長を遂げようとします。アンドレイは戦場での死の淵から生還した後、ナターシャへの愛を通して人生の新たな意味を見出します。トルストイは、人生とは絶え間ない探求と成長の過程であることを示唆しています。