トルストイの戦争と平和と作者
作品成立の背景
「戦争と平和」は、1869年にロシアで出版されたレフ・トルストイの長編小説です。執筆開始は1863年とされており、1812年のナポレオンのロシア遠征を背景に、当時のロシア貴族社会を描いています。
トルストイの経歴と戦争体験
レフ・トルストイは1828年、ロシアの貴族の家に生まれました。青年期には軍隊に入隊し、クリミア戦争に従軍しました。この戦争体験は、後の作品に大きな影響を与え、「戦争と平和」においても、戦争の現実が生々しく描写されています。
作品に反映されたトルストイの思想
「戦争と平和」は、歴史、哲学、恋愛など、多岐にわたるテーマを扱っていますが、その根底には、トルストイ自身の思想が色濃く反映されています。
例えば、作中では、歴史における個人の無力さや、戦争の不条理性といったテーマが繰り返し語られます。これは、クリミア戦争で多くの死と破壊を目の当たりにしたトルストイ自身の体験に基づいたものと考えられます。
また、トルストイは、当時のロシア貴族社会の在り方にも批判的な視線を向けており、作中では、貴族たちの享楽的な生活や、精神的な空虚さが描かれています。
「戦争と平和」における作者の存在感
「戦争と平和」は、登場人物たちの視点から物語が展開される三人称小説ですが、随所で作者であるトルストイ自身の思想や価値観が明確に提示されます。
特に、歴史観や戦争観に関する長大な考察は、作者の強いメッセージ性を感じさせます。これは、トルストイが「戦争と平和」を単なる小説としてではなく、自身の思想を伝えるための手段としても捉えていたことを示唆しています。