## トルストイの復活の対称性
###
ネフリュードフとマースロワの対比
ネフリュードフ公爵とカチューシャ・マースロワは、物語の開始時点では全く異なる社会的地位にいます。裕福な貴族であるネフリュードフは、享楽的な生活を送りながらも、心の奥底では道徳的な葛藤を抱えています。一方、マースロワは、ネフリュードフの過去の行為によって人生を狂わされ、社会の底辺で売春婦として生きています。
###
法廷での再会とそれぞれの「復活」
二人は、マースロワが殺人の容疑で裁判にかけられた際に、法廷で劇的な再会を果たします。ネフリュードフは、自分の過去の罪と向き合い、マースロワの無実を証明するために奔走します。この過程で、ネフリュードフは自身の偽善に気づき、真の贖罪と愛を求めるようになります。マースロワもまた、ネフリュードフの献身的な姿を通して、人間性を回復し、力強く再生していきます。
###
聖書のモチーフと象徴性
「復活」というタイトル自体が、キリストの復活と、登場人物たちの精神的な再生を象徴しています。作中には、聖書のエピソードや登場人物を想起させる場面が繰り返し登場し、ネフリュードフとマースロワの物語に深みを与えています。例えば、マースロワがシベリアへ護送される場面は、イエス・キリストのゴルゴダの丘への道のりを彷彿とさせます。
###
社会の矛盾と不条理の告発
トルストイは、ネフリュードフとマースロワの物語を通して、当時のロシア社会における貧富の格差、司法制度の腐敗、宗教の形式化などの問題を鋭く告発しています。貴族社会の道徳的な退廃と、農民たちの貧困と苦悩が対比的に描かれ、読者に社会正義について深く考えさせる構成となっています。