トルストイのクロイツェル・ソナタの構成
構成上の特徴
「クロイツェル・ソナタ」は、語り手であるポズドヌイシェフの告白という形式で物語が進行する、枠物語の構造を取っています。
第一部
列車の旅の道中、ポズドヌイシェフは、たまたま乗り合わせた乗客たちの「愛」や「結婚」に関する議論に苛立ちを募らせます。そして、自らの結婚生活の破綻と、妻を殺害した過去を語り始めます。
第二部
ポズドヌイシェフは、妻との出会いから結婚生活、そして破局に至るまでの経緯を回想形式で語ります。当初は幸せな結婚生活を送っていた二人でしたが、次第にすれ違いが生じていきます。妻の音楽活動への傾倒、そして、ヴァイオリニストのトルハチェフスキーの登場が、ポズドヌイシェフの猜疑心と嫉妬心を掻き立て、夫婦関係は破滅へと向かいます。
第三部
ポズドヌイシェフは、妻とトルハチェフスキーの関係を疑い、ついに激情のあまり妻を殺害してしまいます。物語は、ポズドヌイシェフの告白が終わり、再び列車の中での場面に戻ります。
「クロイツェル・ソナタ」とベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第9番
トルストイの「クロイツェル・ソナタ」は、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第9番「クロイツェル」から着想を得ています。物語の中で、妻とトルハチェフスキーが演奏する「クロイツェル・ソナタ」が、ポズドヌイシェフの嫉妬心を煽り、悲劇の引き金となる重要な役割を果たします。