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トルストイのクロイツェル・ソナタと時間

## トルストイのクロイツェル・ソナタと時間

時間と語り

「クロイツェル・ソナタ」は、語り手であるポズドヌイシェフの独白によって物語が進行します。彼は列車の中で、過去の出来事を断片的に、そして自身の主観を強く交えながら語っていきます。

ポズドヌイシェフの語りは、時系列通りに進むのではなく、過去と現在を行き来する複雑な構造を持っています。例えば、妻との出会い、結婚生活の破綻、そして殺人に至るまでの出来事が、彼の現在の心境や回想と交錯しながら語られます。

このような語りの構造は、ポズドヌイシェフの心理状態を反映しています。彼は過去の出来事に囚われ、苦悩しています。彼の心の中では、時間は直線的に進むものではなく、過去と現在が複雑に絡み合い、彼を苦しめているのです。

時間と音楽

「クロイツェル・ソナタ」というタイトルは、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第9番を指しています。この曲は、作中でポズドヌイシェフとその妻が演奏する場面があり、物語全体に大きな影響を与えています。

音楽は時間芸術であり、時間とともに展開していきます。「クロイツェル・ソナタ」においても、音楽は時間と深く結びついています。ポズドヌイシェフは、ソナタの演奏を聴きながら、自身の過去を振り返り、感情を揺さぶられます。

また、音楽は、ポズドヌイシェフと妻の関係を象徴する役割も担っています。当初は二人の関係を深めるものとして描かれていた音楽は、次第に二人の間の溝を際立たせるものへと変化していきます。

時間と罪の意識

ポズドヌイシェフは、妻を殺害したという罪の意識に苦しんでいます。彼は過去の出来事を何度も繰り返し思い返し、自らの行動を悔やみます。

時間というものは、彼にとって罪の意識から逃れられないことを意味しています。彼は過去の出来事を変えることはできず、その罪を背負って生きていかなければなりません.

「クロイツェル・ソナタ」は、時間という概念を通して、人間の心理、罪の意識、そして愛と嫉妬といった複雑な感情を描いた作品です。

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