## デュマのモンテ・クリスト伯の批評
批評1:勧善懲悪の痛快さと倫理的問題
「モンテ・クリスト伯」は、無実の罪で投獄されたエドモン・ダンテスが、脱獄後、莫大な財産とモンテ・クリスト伯という新たな身分を手に入れ、自分を陥れた者たちに復讐を果たす物語です。
作品の魅力の一つとして、悪人が主人公の手によって徹底的に punished されるカタルシスが挙げられます。ダンテスは、自分を陥れた者たちの悪事を暴き、社会的地位や財産、家族、そして命までも奪い取ります。その過程は緻密に計算され、読者はダンテスの復讐劇にハラハラドキドキしながらも、痛快さを覚えることでしょう。
一方で、ダンテスの復讐は行き過ぎた面もあり、その冷酷さや残忍さに対しては批判的な意見もあります。特に、復讐の過程で無関係な人々が巻き込まれてしまう点や、ダンテス自身が復讐に囚われていく様子は、倫理的な問題を提起しています。読者は、復讐の正当性や、真の幸福とは何かについて考えさせられることでしょう。
批評2:ロマン主義文学の傑作としての評価
19世紀フランスで流行したロマン主義文学は、感情や個人の自由、想像力などを重視する文学思潮です。「モンテ・クリスト伯」は、その代表作の一つとして高く評価されています。
作品には、エドモン・ダンテスとメルセデス、フェルナンとエドモンの友情と裏切り、ダンテスとアベ・ファリアの師弟愛など、様々な人間関係が描かれています。登場人物たちの激しい感情のぶつかり合い、愛と憎しみの交錯は、読者に深い感動を与えます。
また、作品には、宝島、脱獄、復讐、変装など、冒険小説やメロドラマの要素もふんだんに盛り込まれており、読者は、スピーディーな展開と劇的なストーリーに引き込まれることでしょう。
批評3:社会風刺と歴史描写
「モンテ・クリスト伯」は、単なる復讐劇ではなく、当時のフランス社会に対する風刺も込められています。ナポレオン失脚後のフランスを舞台に、貴族社会の腐敗や堕落、復讐心や名誉欲に駆られた人々の姿が描かれています。
ダンテスを陥れるのは、出世欲に目がくらんだ検事代理のヴィルフォール、嫉妬に狂う船員のダングラール、金に汚い銀行家のカドルッスといった、当時の社会を象徴するような人物たちです。彼らの悪行は、当時の社会における不正や不平等を浮き彫りにしています。
また、作品には、ナポレオン戦争やフランス復古王政など、当時の歴史的背景が色濃く反映されています。ダンテスが巻き込まれる陰謀や、登場人物たちの運命は、時代の大きな流れと密接に関係しており、歴史小説としても読み応えがあります。