## デカルトの省察の評価
評価ポイント
デカルトの『省察』は、近代哲学の出発点とされ、西洋哲学の歴史において最も重要な著作の一つと評価されています。その評価ポイントとしては、主に以下の点が挙げられます。
方法的懐疑と我思う、ゆえに我あり
デカルトは、それまでの伝統的な権威や感覚経験に基づく知識を疑う「方法的懐疑」を用いることで、確実な知識の基礎を探求しました。その結果、疑いえない唯一の真理として「我思う、ゆえに我あり (Cogito, ergo sum)」に到達します。これは、自分が思考しているという事実そのものを疑うことは不可能であることを示しており、主観的な意識を基盤とした近代哲学の出発点となりました。
理性主義の確立
デカルトは、『省察』において理性こそが真理認識の基礎であると主張し、経験論と対比される理性主義の立場を確立しました。彼は、神の存在証明や外界の存在証明においても、理性的な推論を用いることで、確実な知識を得ることができると考えました。
心身二元論
デカルトは、『省察』の中で、精神と身体を全く異なる実体として捉える「心身二元論」を展開しました。精神は思考する非物質的な実体であり、身体は広がりを持つ物質的な実体であるとされ、両者は相互作用しながら人間を構成すると考えました。この心身二元論は、後の西洋思想に大きな影響を与え、現代の心の哲学においても重要なテーマとなっています。
影響と批判
『省察』は、その後のヨーロッパ大陸の哲学に多大な影響を与え、ライプニッツ、スピノザ、カントといった哲学者たちもデカルトの思想を継承しつつ、独自の哲学体系を構築しました。一方で、『省察』は、その方法や結論に対して多くの批判も受けてきました。例えば、方法的懐疑は懐疑の行き過ぎであるという批判や、心身二元論における心身相互作用の問題などが挙げられます。