## デカルトの省察の価値
哲学史における画期的な意義
「省察」は、西洋哲学史において極めて重要な作品として位置付けられています。 デカルト以前は、アリストテレスの哲学が scolastics として中世のキリスト教神学と結びつき、西洋思想の主流を占めていました。 デカルトは、伝統的な権威や既存の知識体系に盲目的に従うのではなく、 自らの理性に基づいて真理を追求する姿勢を明確に打ち出しました。
方法的懐疑と「我思う、ゆえに我あり」
デカルトは、確実な知識の基礎を築くために、まずはじめに「方法的懐疑」と呼ばれる思考実験を行います。 彼は、感覚、想像力、理性など、あらゆる認識能力を疑いの対象とし、最終的に「我思う、ゆえに我あり (Cogito, ergo sum)」という有名な命題に到達します。 この命題は、自分が疑っているという事実そのものを根拠とすることで、あらゆる懐疑に耐えうる自己の確実な存在を証明しています。
近代哲学における理性主義の基礎
デカルトは、「我思う、ゆえに我あり」を出発点として、理性的な推論によって神の存在証明や外界の認識の可能性を論じていきます。 彼は、人間の理性の中に、生まれつき備わっている「明晰判明な観念」が存在すると主張し、この観念を手がかりにすることで、外界に関する真なる知識を得ることができると考えました。 このようなデカルトの思想は、理性に基づいて世界を理解しようとする「理性主義」の基礎となりました。
心身二元論と近代思想への影響
デカルトは、「省察」において、心と身体を全く異なる実体として捉える「心身二元論」を展開します。 彼は、心は思考する非物質的な実体であり、身体は空間的な広がりを持つ物質的な実体であると定義し、両者は相互作用しながらも独立に存在すると考えました。 この心身二元論は、その後の西洋思想に大きな影響を与え、現代の心脳問題や意識の問題にも繋がっています。