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ディルタイの精神科学序説の案内

## ディルタイの精神科学序説の案内

ディルタイの精神科学序説とは?

1893年に出版されたヴィルヘルム・ディルタイの主著『精神科学序説』は、自然科学と異なる独自の基礎に基づく「精神科学」を確立しようとした試みです。ディルタイは、当時の学問界を席巻していた自然科学的方法を人間の精神生活に適用することの限界を鋭く指摘し、人間の内的経験を理解するためには、解釈学的・歴史的な方法が必要であると主張しました。

本書の背景

19世紀後半、自然科学は目覚ましい発展を遂げ、その方法論は学問の規範と見なされるようになりました。しかし、ディルタイは、自然科学が対象とする客観的な自然現象と、人間の精神現象とでは根本的に異なる点があると考えました。自然現象は外部からの観察によって理解できるのに対し、人間の精神現象は内的経験であり、他者のそれを直接体験することはできません。

精神科学の方法

ディルタイは、自然科学が「説明」を目指すのに対し、精神科学は「理解」を目指すとしました。彼によれば、「理解」とは、客観的な法則によって対象を説明するのではなく、対象と一体化し、その内的経験を追体験することによってのみ可能となります。

ディルタイは、この「理解」の方法として、「解釈学」、「心理学」、「歴史主義」の三つを挙げました。

* **解釈学:** テキストや作品から、作者の意図や表現された経験を解釈する。
* **心理学:** 人間の内的経験を分析し、その法則性を見出す。ただし、ディルタイは、自然科学的な心理学ではなく、生の全体性を捉えることを重視する「記述的心理学」を提唱しました。
* **歴史主義:** 歴史的文脈の中で、人間の精神活動を理解する。

本書の影響

『精神科学序説』は、後の哲学、歴史学、文学、社会学などの人文・社会科学に多大な影響を与え、20世紀の人文科学の方法論を方向付ける重要な役割を果たしました。特に、解釈学は、ガダマー、ハイデガー、リクールなどの哲学者によって継承され、現代思想の重要な潮流の一つとなっています。

注意点

『精神科学序説』は、難解なことで知られる書物です。ディルタイの思想は多岐にわたり、また、彼の文章は複雑で抽象的です。本書を読むには、当時の時代背景やディルタイの思想的背景についての知識が不可欠となります。

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