## ディケンズの二都物語の構成
### 構成上の特徴
「二都物語」は、全編を通して対比構造が巧みに用いられている点が特徴です。
### 第一部 蘇生（Recalled to Life）
– 1775年のフランスとイギリスを舞台に、物語が幕を開けます。
– 登場人物たちの境遇や運命が複雑に絡み合い、物語の伏線が張られます。
– 特に、フランス貴族の残虐さと、それに苦しむ民衆の姿が鮮明に描かれます。
– フランス貴族であるエヴレモンド侯爵の甥、チャールズ・ダーネイは、叔父の悪行を目の当たりにし、貴族社会に嫌気がさしてイギリスへ亡命します。
### 第二部 黄金の糸（The Golden Thread）
– 舞台は5年後、1780年のイギリスのロンドンに移ります。
– 亡命中のチャールズ・ダーネイは、医師マネットの娘ルーシーと恋に落ちます。
– しかし、フランスから逃亡してきた革命家と目される人物の裁判に巻き込まれてしまいます。
– かつてチャールズと瓜二つだった弁護士シドニー・カートンが、機転を利かせてチャールズを救い出します。
### 第三部 足跡（The Track of a Storm）
– フランス革命が勃発し、物語は再びフランスを舞台に進みます。
– ルーシーと結婚したチャールズは、旧貴族としての罪を問われ、投獄されてしまいます。
– チャールズを救うため、ルーシーとマネット医師はフランスへ渡ります。
– シドニー・カートンは、ルーシーへの報われない愛と自己犠牲の精神から、チャールズと入れ替わって処刑台に上ります。
### 各部の関連性
– 第一部の「蘇生」は、文字通り物語の主要人物たちが運命に翻弄されながらも、再び人生を歩み始める様子が描かれています。
– 第二部の「黄金の糸」は、ルーシーの優しさと愛情を象徴するものであり、登場人物たちの運命を繋ぐ役割を果たしています。
– 第三部の「足跡」は、フランス革命の嵐が人々の運命に大きな影響を与えることを暗示しています。
### 章立てと時系列
– 各部はさらに複数の章で構成され、それぞれの章には象徴的なタイトルが付けられています。
– 時系列は必ずしも一直線ではなく、過去と現在を行き来しながら物語が展開していきます。
### その他の構成要素
– ディケンズは、登場人物たちの心理描写や社会背景の描写にも力を注いでいます。
– 貧困、格差、革命といった社会問題を背景に、人間の愛と憎しみ、自己犠牲といった普遍的なテーマが描かれています。