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ツルゲーネフの父と子から学ぶ時代性

ツルゲーネフの父と子から学ぶ時代性

近代化と社会の変革

 19世紀半ばのロシアは、農奴制の廃止や西欧化の影響など、大きな社会変革期にありました。 ツルゲーネフの「父と子」は、まさにこの変革期を舞台に、旧世代と新世代の対立を鮮やかに描き出しています。

 作中で描かれる「父」世代は、伝統的な価値観や生活様式を重んじる貴族階級を象徴しています。 彼らは土地や家柄に誇りを持ち、農奴制や身分制度を当然のものと考えていました。 一方、「子」世代であるバザロフのような若者たちは、西欧の科学や合理主義に傾倒し、古い社会体制や価値観を否定する「ニヒリスト」として登場します。

世代間対立と社会不安

 小説では、父と子の象徴的な対立を通して、伝統と近代、保守と革新が激しくせめぎ合う時代の雰囲気をリアルに感じ取ることができます。 特に、バザロフとキ尔斯ノフ父子の対立は、世代間の価値観の断絶を象徴的に示すエピソードとなっています。

 バザロフは、貴族社会の象徴であるキ尔斯ノフ家を「時代遅れ」と切り捨て、伝統や感情を否定するニヒリズムを説きます。 一方、キ尔斯ノフは、バザロフの冷酷なまでの合理主義に反発し、人間的な温かさや美意識の重要性を訴えます。 このような世代間の対立は、当時のロシア社会全体に広がる不安や葛藤を反映していると言えるでしょう。

愛と死の影

 「父と子」では、社会的なテーマだけでなく、普遍的な人間の愛と死も重要なモチーフとして描かれています。 ニヒリストを自称し、愛や感情を否定するバザロフでさえ、アンナ・セルゲーエヴナへの恋心をきっかけに、自身の内面に潜む矛盾や葛藤に苦悩することになります。

 また、バザロフは、物語の終盤で思いがけず病に倒れ、若くして命を落としてしまいます。 彼の死は、ニヒリズムの限界を示唆すると同時に、人間存在の脆さ、そして愛と死の深淵を読者に突きつけます。

 このように、「父と子」は、19世紀半ばのロシア社会における変革期を背景に、世代間対立、社会不安、そして普遍的な人間の愛と死を描いた作品と言えるでしょう。

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