ダーウィンの種の起源に影響を与えた本
マルサスの「人口論」
トーマス・ロバート・マルサスが1798年に匿名で出版した「人口論」は、人口増加の傾向と、それがもたらす資源の枯渇への懸念を論じたものです。マルサスは、人口は幾何級数的に増加する一方で、食料生産は算術級数的にしか増加しないため、いずれは食料不足や貧困などの問題が深刻化すると主張しました。
ダーウィンは、マルサスの「人口論」を1838年に読んで感銘を受けたとされています。彼は、マルサスの主張する人口と資源の不均衡が、生物の世界にも当てはまると考えました。つまり、すべての生物は、限られた資源を奪い合う競争状態に置かれており、その中で生き残ることができるのは、環境に適応した個体だけであると考えたのです。
ダーウィンは、この考え方を基に、自然選択による進化論を構築しました。自然選択とは、環境に適応した個体がより多くの子孫を残し、その結果、有利な形質が集団内に広がっていくというメカニズムです。マルサスの「人口論」は、ダーウィンに自然選択の概念を思いつかせる上で、重要な役割を果たしたと言えるでしょう。