ダンテの天国篇が関係する学問
神学
ダンテの「神曲」全体を通して、そして特に「天国篇」においては、中世キリスト教神学が作品を理解するための基本的な枠組みを提供しています。「天国篇」は、トマスのアクィナスの神学、特に至福論の影響を強く受けています。ダンテは、天国における魂の階層構造、神との視覚的直観による至福の概念、救済における神の恩寵と人間の自由意志の相互作用など、アクィナスの思想を織り交ぜています。
天文学
「天国篇」には、当時の天文学の知識が反映されています。ダンテは、プトレマイオスの宇宙論に基づいて天国を構成し、地球を中心とした9つの天球を巡る旅を描写しています。各天球は、月、水星、金星などの天体と対応しており、ダンテは天体の象徴性と結びついた魂たちとの出会いを描きます。
古典文学
ダンテは、ウェルギリウス、オウィディウス、キケロなどの古典作家に深い影響を受けており、「天国篇」にもその影響が見られます。ウェルギリウスは「地獄篇」と「煉獄篇」の案内役として登場し、「天国篇」でも彼の影響は色濃く残っています。また、ダンテは古典的な修辞法や寓意を用いて、複雑な神学的概念を表現しています。
政治思想
「天国篇」は、当時の政治状況に対するダンテの思想を反映しています。ダンテは、教皇権と皇帝権の対立という当時の政治的混乱を背景に、理想的な政治秩序についてのビジョンを提示しています。ダンテは、正義と平和が実現されるためには、皇帝と教皇がそれぞれ独立した権威を持ち、協力し合う必要があると考えていました。